アマチュアトランペッターのつぶやきfromアメリカ

アメリカ在住時に音楽活動経験をした日本人アマチュアトランペッターが、日米の音楽活動を通して見聞きしたことをいろいろ綴ってみます。

練習中の私語

日本でいう楽団指揮者あるいは団内指揮者は、アメリカの吹奏楽団ではだいたいBand Directorと呼ぶ。言うまでもなく大変な役割である。
私の所属するバンドのDirector、Jさんは、大変温厚で真面目な方である。その方の悩みの一つは、練習中の団員の私語。さすが皆さんアメリカ人なので、彼らの口を塞ぐのは容易ではない。思ったことは口にせずにいられない。もちろん皆気を遣って小さな声で話す。しかし、複数の人間が私語をすれば、当然Directorの話が聞こえにくくなる。毎回毎回Jさんは、紳士的に、「私語はやめてください。」「私の話を聞いてください。」「はい、こちらに注目してください。」と、いろいろな言い方で諭される。もちろん皆成熟した大人であるので、あ、これはいけない、と静かになる。しかし次の演奏が途切れた瞬間、半本能的に、私語が始まる。

Jさんは毎週練習の後、感想や事務連絡、指示事項を伝えるためのメールを送信されているが、たびたび私語に関する注意が、比較的長文で書かれている。Jさんが練習を意義深いものにしようとする真摯な姿勢が伝わる。皆おそらくJさんの考え、気持ちにちゃんと共感している。

でもいざ練習になると、私語はなかなか減らない。

先日の練習の開始前、Jさんが意を決したように滔々と話し始めた。長い話だが、Jさんの真面目な人柄と、アメリカ人としての気質が随所に表れた話なので、できるだけ文脈を変えずに、以下に再現してみる。

「皆さん聞いて下さい。今日はみなさんに提案があります。我々の練習時の行動についてです。皆さんはバンドのメンバーとして、ここで練習し、上達し、よりよい音楽を演奏するのが、責務であります。私はバンドディレクターなので、みなさんに指示を出して、バンドの音楽をより良いものにするためにみなさんを導く責務があります。そこで、私はこれから述べるような行動をとることを宣言します。
まず、私は練習中はディレクターであって、みなさんの友達ではありません。私が練習の指示を出そうとするとき、みなさんが私語をされていれば、私語をやめてくれるまで指示は出しません。静かになるまで待ちます。しずかになってから、指示を出します。練習を進めるのはみなさんの責務でもあるので、そのためには私語は慎んで、私が出す指示は必ず聞いてください。みなさんの取るべき行動は、みなさんの責務に基づいて、よく考えて、決めてください。わかりますね。もし質問があるときは手を挙げてください。私がみなさんの挙手に気づかないとき、私の名前を呼ぶことは問題ありません。手を挙げないでしゃべることは慎んでください。
もう一度言いますが、練習中は私はあなたの友達ではない。ディレクターです。練習が終わって、いつものレストランでご飯を一緒に食べるときは友達です。というか、少なくとも私は、みなさんの友達だと思っています。みなさんも私のことを、その時は友達と思ってくれると嬉しいです。
話を戻します。以上が私の行動宣言です。今後、練習中は私はそのような行動を取ります。副指揮者のSさんがどういう行動をとるかは、Sさん次第ですのでSさんが決めますが、私はそうします。みなさんがどういう行動をとるべきかは、お分かりですよね。よろしくお願いします。」

いちいち解説するのは野暮かと思うが、以下が私の興味を引いたアメリカ人らしいポイント。

・前置きが仰々しいのは、アメリカ人として話に権威あるいは公式である雰囲気を持たせるための常套手段。
・人そのものを批判せず、行動を正そうとしている。罪を憎んで人を憎まずと似た感じ。
・あえて友達ではないとまで言い切って、メッセージを強く発信し、意見ではなく指示というニュアンスを作っている。
・それでも個々の取るべき行動は個々の責任であるというアメリカ的な原則論からは逸脱していない。
・発言の権利をルール化して確保している。
・友達としての関係の維持にしっかり言及することで気持ちの面にも配慮している。
・副指揮者の権限は冒していない。

すべてのアメリカ人がこうではないが、田舎の真面目で厳格なおじいさんらしい、非常に成熟した姿勢であると感じた。みんな真面目に聞いていた。その日の私語は、劇的に減った。

しかし次の週、だいたい元に戻った。。。

Jさんの奮闘は続く。
  1. 2013/09/07(土) 08:40:42|
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Author:RYStrp
アメリカ在住経験のある、日本在住の会社員。アマチュアトランペッター。トランペット歴は小学校6年生にはじめて以降、吹奏楽、オーケストラ、金管アンサンブルを経験。

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